さまざまなラインナップが取りそろえられ、さまざまな症例に対して適応できるようになってきたマウスピース矯正(インビザライン)ですが、中には苦手とする症例やできない症例があります。
マウスピース矯正の苦手な症例、できない症例について解説します。
目次
■顎の骨の形に問題があるもの
Ⅰ期矯正とⅡ期矯正
矯正には12歳頃までに終わるⅠ期矯正と、それ以後に行うⅡ期矯正があります。
Ⅰ期矯正は顎の成長を利用したもので、下顎前突や受け口などの治療を行うことができます。
対してⅡ期矯正は、顎の形が完成した後に歯列を整えるための矯正となります。
基本的にインビザラインで対応できるのは、このⅠ期、Ⅱ期ともに歯列を整えるための矯正に属するものです。
Ⅰ期矯正の骨格を伴う矯正は、ワイヤー矯正でも治療できない
Ⅰ期の骨格をともなう矯正は、マウスピース矯正だけでなくワイヤー矯正でも対応ができません。
ワイヤー矯正、マウスピース矯正ともに、大人になってからの矯正は、歯並びを整えるもののみとなります。
骨格性の症例は外科処置の適応になります
大人になってからの、骨格に由来する不正咬合の矯正は、外科処置の適応になります。
上顎前突、下顎前突など、骨を削って出ている顎を後ろに下げる処置を行います。
■その他の問題があるもの
歯周病がひどい
骨格性の症例以外にも、その他の理由で矯正が行えないこともあります。
例えば歯周病がひどく、骨に歯が安定しないと考えられるものは矯正の適応にはなりません。
歯周病が完治してから、矯正できるかどうか歯科医師と相談し、行うことになります。
インプラントが入っている
インプラントは基本的に1度埋入した場所から動かすことができません。
これには歯根膜という、クッションとなる役割をする軟組織が大きく関わっています。
矯正治療の際、での歯根膜に力をかけると骨の吸収と造成が始まります。
これにより歯は移動することができます。
しかしインプラントは直接歯槽骨と結合しているため、この歯根膜が存在しません。
そのため力をかけても歯が動くということはなく、インプラントが入っている方は矯正を行うことができません。
■ワイヤー矯正の方が向いているもの
重度のもの
骨格に問題があるもの、歯周病があるもの、インプラントが入っているものなどは基本的にはワイヤー矯正でも、マウスピース矯正でも適応になりませんが、ワイヤー矯正のみが得意とする症例もいくつかあります。
重度の叢生などは、マウスピース矯正には不向きで、ワイヤー矯正を行った方がきれいに治る確率が上がります。
抜歯が必要なもの
抜歯が必要なものも、ワイヤー矯正の方が向いているケースがあります。
マウスピース矯正の歯の動かし方は、歯体移動といって、歯を横方向に水平に動かすものです。
そのため、あまりにも隙間が開いている場所に動かそうとすると、傾いてしまったりするケースがあります。
最近ではマウスピース矯正の適応症例も増え、多数歯の抜歯以外では適応できることも増えてきました。
しかし、ワイヤー矯正の方が得意な動きであるケースも考えられるため、慎重に治療法を選びたいものです。
回転などの動きを伴うもの
マウスピース矯正は水平な歯体移動を基本にしていることから、回転をなどの動きを伴うものも、ワイヤー矯正の方が得意なことがあります。
ワイヤー矯正の方が向いているのか、マウスピース矯正が向いているのかよく見極め、このような動きが必要となるケースでは、ワイヤー矯正も視野に入れて矯正方法を選択する必要があります。
【インビザラインの適応症例は増え続けています】
ワイヤー矯正、マウスピース矯正ともに不可な症例のもの、またワイヤー矯正の方が向いているものなのがありますが、マウスピース矯正で治せる症例は年々増え続けています。
患者さまご自身のライフスタイルや最終的なゴールを見据え、より良い方法を選択していけると良いのではないでしょうか。